2005年05月26日

12人目のサポーターが引き寄せたリバープールのチャンピオンズリーグ優勝

 リバプールとACミランによるUEFAチャンピオンズリーグ決勝。後半開始直後の53分、リバプールの左サイドハーフ、リーセがあげたクロスを、キャプテン、ジェラードがヘディングでミランゴールに押し込んだ。

 前半が終わった段階でのスコアは、ミランが3−0でリード。「百戦錬磨、試合巧者のミランに3点差も付けられてしまってはおしまいだ」。そんな沈鬱な雰囲気が支配していたリバプールサポーターに、希望の灯が点った瞬間だった。

 にわかに沸き立つリバプールサポーター。だが僕が得点シーンよりむしろ心動かされたのは、キャプテン、ジェラードが得点直後にとった行動だった。

 ジェラードはゴールからハーフラインに走って戻るまでの間、観客席に向かって両腕を何度も何度も力強く上に振り上げ、リバプールサポーターがもっと盛り上がることを要求したからだ。まるで「何を、静かにしてるんだ! 俺たちが逆転するには、あんた達の力が必要なんだ。もっともっと力強く応援してくれ」と、叫ぶかのように。

 今季のチャンピオンズリーグにおけるリバプールの躍進には、いくつもの要因があるだろう。スペインのバレンシア監督だったラファエル・ベニテスの監督就任。相手の長所を消す守備の巧みさ。シャビ・アロンソやルイス・ガルシア加入によるスペイン流パスサッカーの開花。だが忘れてはならないのは、ホーム、アンフィールドでのサポーターの応援だ。

 ギリシャのオリンピアコスに対して、劇的な逆転勝ちで決勝トーナメント進出を決めたグループリーグ最終節。それまでは鉄壁の守備を誇っていたイタリア、ユベントスからいとも簡単に2得点を奪って勝った準々決勝第1戦、ユベントス戦での2−1の勝利。そしてプレミアリーグ最強のチェルシーに対し、ルイス・ガルシアのゴールを守りきって決勝にコマを進めた準決勝第2戦。どれもが、ホーム、アンフィールドのサポーターの存在がなければ、結果は違ったものになっていたのではないか。

 このチェルシーとの準決勝第2戦を前に、ベニテスは「チェルシーには、世界で最も高額な選手たちと有能な指揮官がいる。しかし、われわれにも最高のサポーターたちがおり、チェルシーといえども冷静さを保てないだろう。勝負は五分五分だ」と語ったという。まさにその「最高のサポーター」たちが支えとなり、リバプールの躍進を支えてきたのだ。

 だが、この日決勝が行われたトルコ・イスタンブールにあるアタチュルク・オリンピック・スタジアムで、リバプールサポーターは沈黙を強いられた。なにしろ騒ごうと思っていた矢先に、試合開始からわずか1分で、ミランの36歳の主将、マルディーニに先制点を決められてしまったからだ。

 それからの45分、前半のリバプールはどう見てもおかしかった。右サイドバックのトラオーレはクリアやラインコントロールでミスを繰り返す。

 同点狙いで前掛かりになっているせいか、ふだんは隙間のないはずの中盤とディフェンスラインとの間に、大きなスペースがある。そのスペースをカカに自由に使われてしまい、フォワードのシェフチェンコとクレスポに、何本も決定的なパスが通る。

 PSVのパク・チソンにいいようにかき回された準決勝第2戦とは違い、ミランの各選手のコンディションは抜群で、「コンディションがよい時のミランは、こんなにも強いのか」と思わせるできだった。

 試合後にシェフチェンコが「僕のゴールはオフサイドじゃなかった」と語ったシーンも含め、オンサイドでもおかしくない判定がいくつかあり、ジャッジ次第では、もっと点差がついてもおかしくない展開。リバプールサポーターは沈黙するだけでなく、ハーフタイムには泣き出す人までいたほどだ。

 その展開をガラリと変えたのが、ジェラードの1−3となるゴールであり、その後のスタンドに向かってのパフォーマンスだった。それまでの時間、リバプールのサポーターがいないかのようだったのに、突如としてスタジアムがアンフィールドになったかのような変わりようだった。

 それからの何分間か、リバプールは怒濤の攻めを続けた。まずはシュミチェルが2分後の56分、約20メートルのロングシュートをゴール左下隅に決めた。そして60分、ペナルティーエリアにドリブルで突き進んだジェラードを、背後からガットゥーゾが倒した。

 シャビ・アロンソのペナルティーキックは、いったんはミランのGKジーダにセーブされたが、アロンソは跳ね返りを左足で決めた。わずか6分でリバプールは、絶望的と思われたゲームを振り出しに戻したのだ。

 試合後、ミランのカルロ・アンチェロッティ監督は「われわれは6分間の精神錯乱に陥ってしまった。その後は120分までプレーを続けて耐え抜いたことを考えると、あの6分間は説明がつかない。とても残念だし、悔しく思うが、これがサッカーだ」とコメントしたという。

 アンチェロッティが、そう言いたくなるのはものすごくよくわかる。ミランが突然崩れたわけではない。なのに6分間に3点を与えてしまった。もちろんその陰には、ベニテスのハーフタイムでの指示や戦術・選手変更もあっただろう。

 だがあの嵐のような6分間が起こったのは、やはりリバプールサポーターの力ではなかったか。そしてそのサポーターの力を引き寄せた、ジェラードの得点とその後のパフォーマンスが、強く印象に残る。

 120分を闘い終えた後のPK戦でも、リバプールサポーターはミランの選手にプレッシャーをかけ続けた。PK戦は運の側面が強いが、リバプールがその運をたぐり寄せることができたのは、サポーターの力が大きかった気がする。「サポーターは12人目の選手」。改めてそんな言葉を思い出した。

 試合後、表彰を終えてジェラードがビッグイヤーを掲げると、リバプールを象徴する真っ赤な紙吹雪が授賞式のステージを染め、歓喜の声がこだました。「美しい」と思った瞬間だった。

  
posted by KH at 23:30| Comment(0) | TrackBack(2) | サッカー・スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

リヴァプール欧州制覇
Excerpt: トルコのイスタンブールで行なわれた欧州チャンピオンズリーグ決勝戦ACミランvsリヴァプールは、前半ミランが3得点も、後半にリヴァプールが3点を返し、3−3で延長戦へ。、延長でも決着付かずPK戦の末..
Weblog: 幸せにっぃて本気出して考ぇてみた☆
Tracked: 2005-05-27 07:52

勝利
Excerpt: 優勝した。 優勝した! 優勝した!! 相方の地元・リヴァプールが、 UEFAチャンピオンズ・リーグで決勝に進んでいたのだが、 それが優勝したのだ!!   ..
Weblog: ニ ュ ー ヨ ー ク ・ ブ ロ ウ                         〜NYでもタコ焼きを焼く英国人へ〜
Tracked: 2005-06-02 07:59
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。