2005年09月19日

保阪正康『あの戦争は何だったのか』

 今年は戦後60年ということで、いつになく昭和史(特に太平洋戦争)に関する本が数多く出版された。このごろ世の中が右傾化していることをひしひしと感じていた僕は、昭和史関連の本をいくつか読んでみようと思い、まず手に取ったのが保阪正康の『あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書』(新潮新書)だ。

 この本の帯には「太平洋戦争の総括なくして、どうして平和が語れるのだろう? また、日本は何を反省すればいいのか? この本にはその答えがある」とあるのだが、率直な感想は「そこまでの本ではないな」ということ。新書版で250ページというスペースでは、そもそも太平洋戦争についての詳細を語るのに無理があるのだ。

 第1章の「旧日本軍のメカニズム」、開戦の責任は陸軍ではなく海軍にあったことを明らかにする第2章の「開戦に至までのターニングポイント」は面白い。が、戦争の経過を追った第3・4章はおおざっぱすぎる気がする。

 著者は後書きでこう書いている。

あの戦争のなかに、私たちの国に欠けているものの何かがそのまま凝縮されている。そのことを見つめてみたいと私は思っているのだ。その何かは戦争というプロジェクトだけでなく、戦後社会にあっても見られるだけでなく、今なお現実の姿として指摘できるのではないか。

 戦略、つまり思想や理念といった土台はあまり考えずに、戦術のみにひたすら走っていく。対処療法にこだわり、ほころびにつぎをあてるだけの対応策に入り込んでいく。現実を冷静に見ないで、願望や期待をすぐに事実に置きかえてしまう。太平洋戦争は今なお私たちにとって、“良き反面教師”なのである。(240〜250ページ)

 確かにその通りだけれど、これまでの太平洋戦争本にない新しい視点を期待していた僕は、物足りなさも感じてしまった。これが著者の結論であるのなら、これは昔から言われていたではないかと……。
 
 しかし太平洋戦争を全く知らない若い人たちにとっては、コンパクトに「あの戦争」を学べる本書のような本は、大いに意味があるのだろう。
posted by KH at 15:41| Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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あの戦争は何だったのか
Excerpt: ■保坂正康『あの戦争は何だったのか大人のための歴史教科書』(新潮新書)は、いろいろな意味で勉強になる本だ。■おなじ著者による『「特攻」と日本人』(講談社現代新書)と ともに、戦後60年間の 知的空白、..
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