2005年10月16日

『世界文学を読みほどく』から『パルムの僧院』へ

 昔から、小説やノンフィクションの作品そのものを読むのと同じくらい、読書本が好きだ。呉智英の『読書家の新技術』(朝日文庫) で、新聞の読書欄から「読むべき面白い本」を見つけ出す技術を身につけ、小林信彦の『小説世界のロビンソン』(新潮文庫)で、「面白い小説とは何か」を学んだ。

 そんな僕にとって、すこぶる魅力的に見えたのが、今年初めに出版された池澤夏樹の『世界文学を読みほどく スタンダールからピンチョンまで』(新潮選書)だ。帯には「世界の10代傑作がこんなにわかる。小説を通してみると、世界のこともこんなにわかる。」とある。

 池澤夏樹は、今の日本の小説家の中でも、最も現実世界の出来事に関心を持ち続け、発言をし続けてきた一人だろう。2001年9月11日の米中枢同時テロの時も、直後からメールマガジンによるコラムを書き続けてきた(その後、『新世紀へようこそ』『世界のために涙せよ−新世紀へようこそ2』となって出版された)。

 この本は単なる世界文学解説本ではない。現代世界に能動的にかかわってきた池澤夏樹が、19世紀からの世界文学の十大傑作を通して世界の姿を読み解いていこうという本だからこそ、惹かれたのだ。

 ところが恥ずかしながら、この本が取り上げた、その十大傑作をほとんど読んでいない。ということで、まず初めに取り上げられているスタンダールの『パルムの僧院』(新潮文庫、上下二巻)を読んでみた。

 正直に言うと、上巻、特に前半は苦労した。この小説はフランス人であるスタンダールが、まだ統一されていない、いくつかの小国の集まりだったイタリアを舞台に書いた小説なのだが、その当時のフランスとイタリアの関係、あるいは政治状況や貴族の生活作法などがわかっていない僕にとっては、素直に世界に入り込むことができなかったからだ。

 しかしその小説世界に慣れ出すと、この小説はとたんに面白くなる。特に文庫本の下巻(新潮文庫のこの前出た、字の大きい改版で、400ページ超)になると、息つく暇なく、最後まで読者は引っ張られる。

 池澤夏樹は『世界文学を』の中で、『パルムの僧院』を、「幸福」という概念で説明しているが、まさにその通りといった感じだ。

 登場人物たちは途中さまざまな不幸に見舞われるけれど、その不幸まで含めて彼らは幸福であるという印象がある。ストーリー全体が祝福されていると言ったらいいか、そこが面白いところです。

 何よりも登場人物が魅力的だ。主人公のファブリス、その叔母で、ファブリスを思い続けるサンセヴェリーナ公爵夫人、そしてファブリスと密かな形で結ばれるクレリア……。

 だけれども、と思う。今の時代にも、こういう小説を書けるのかなあと。世界は、『パルムの僧院』が描くような「幸福感」を、今の時代は許さなくなっているように思う。

 それでも、もう一度読み返したいと思う。次に読む時は、冒頭から小説世界へすんなりと入っていけるはずだ。
posted by KH at 23:24| Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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